「キャッシュレス推進」の真の狙いとは
来年10月に消費税率が8%→10%に引き上げられる際、消費を喚起するための経済対策の目玉として導入されるのが、「キャッシュレス決済によるポイント還元制度」です。
電子マネーやクレジットカードなどキャッシュレスで商品を購入すると、購入額の数%分のポイントを消費者に還元するというもの。ポイント相当額は国が負担します。
税率が2%引き上げられることから、当初はポイント還元率は2%と設定されていましたが、安倍総理の肝いりで5%に引き上げられました。
食料品の税率は8%に据え置く軽減税率が導入されることから、品目によっては実質的に減税となる見通しです。
例えば、税抜き2000円の米(5キロ)を購入する場合、来年10月以降も価格は税込み2160円と据え置き。
キャッシュレス決済で購入した場合、100円相当分のポイントが還元されるため、増税後の方がお得に購入することができることになります。
「キャッシュレス推進」の真の狙いとは
なぜ、国はここまでキャッシュレス化を推し進めるのでしょうか?
経産省は今年10月に「キャッシュレス決済が日本を変える」との政策特集を組み、キャッシュレス決済導入のメリットを訴えています。
一つ目が人口減に備えた実店舗の省力化。キャッシュレス比率を高めることで、レジ作業の効率化を図ることができます。
つり銭用の小銭を大量に用意する必要がなくなるほか、売上現金を金融機関に入金する頻度が下がります。
次は、利便性の面。スマホ決済を導入すれば、現金はおそか、財布を持ち歩く必要すらなくなり、利便性が向上する利点があります。
この他、インバウンド需要取り込みを図ることも狙いとされます。
観光庁が訪日外国人に行ったアンケート調査では、「旅行中に困ったこと」の項目で、クレジットカード利用ができないことが16.1%と第4位。
多様な決済手段の導入を推進すれば、訪日客がよりお金を落としてくれると考えているのです。
ここまでのキャッシュレス決済導入の“表向きの理由”について、特に異論はないのではないでしょうか。
キャッシュレス先進国、韓国がモデル
お隣の韓国は、世界で最もキャッシュレス化が進んでいる国の一つです。
キャッシュレス比率は「89.1%(2015年)」。国民一人当たりクレジットカードを2.5枚持つ日本のキャッシュレス比率が「18.4%」ですので、韓国の凄さが、お分かり頂けるかと思います。
韓国は1997年のアジア通貨危機を受け、国内景気の活性化を目的に、政府主導でキャッシュレス化を推進しました。
韓国が実施したクレジットカード推進策は次の3点です。
- 年間クレジット利用額の20%の所得控除(上限30万円)
- 宝くじの権付付与
- 店舗でのクレジットカード取扱義務化(年商240万円以上の店舗が対象)
(※平成30年4月経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」より)
税制面の控除が受けられ、なおかつ宝くじももらえるという大盤振る舞いの政策を実施した結果、クレジットカードの利用金額は1999年~2002年にかけて6.9倍に急拡大することになるのです。
真の狙いは?
キャッシュレス導入の目的は、「不透明な現金流通の抑止」にほかなりません。
今年7月に、大阪城の天守閣そばの売店のたこ焼き屋が、3年間で1億3000万円余りを脱税していたとして国税庁が告発しました。
3年間で5億円以上を売り上げていたのに、適切に申告していなかった疑いが持たれています。
クレジットカードを導入すれば、売上データはカード会社に筒抜けになり、売上のごまかしがきかなくなります。
国内企業は全体で約266万社です。うち、63.5%にあたる169万社が赤字となっています。(国税庁 2016年度調査)
赤字企業は業種によっても比率が異なり、料理飲食旅館業が73.8%と業種別で第3位となっています。
売上を過少に申告し、赤字に見せかけている事業者がある可能性があるため、クレジットカードなどキャッシュレス決済の導入で、売上データを把握する狙いがあります。
キャッシュレス導入の真の狙いは、税の徴収率引き上げです。導入初年の19年は、ポイントのバラマキや決済端末導入の助成などに税金を導入することになりますが、徴税率が上がれば、十分元が取れるわけです。
言うまでもなく、過少申告による脱税は犯罪です。ポイント還元制度が導入されても、キャッシュレス決済の導入を拒み続ける店舗があれば、国税が睨みを利かせることになりそうです。
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